当事務所のウェブサイトでの市民法務部門の紹介はこのような文章から始まります。
弁護士を志したのはなぜか。それは「誰か」を助けたいと思ったからです。市民が暮らしの中で直面するさまざまな困難に寄り添い、共に取り組んで、解決をする。当事務所の弁護士は、みなその出発点を共有しています。
この言葉に、私たちの理念はすべて集約されています。当事務所が規模を拡大しても、市民法務の要素を大切にし続けるのは、このような思いを原点に置いているからなのです。
取り扱い事件
よくあるご相談は以下のとおりです。
家族: 離婚、親権・面会交流、養育費、遺産分割・遺言、成年後見
住まい: 不動産売買・賃貸、明渡し、境界確定、騒音・日照など近隣紛争
労働: 解雇・雇止め、残業代請求、ハラスメント、労災・労働審判
事故・賠償: 交通事故、医療過誤、犯罪被害、名誉毀損・ネット中傷
債務: 貸金返還、保証債務、任意整理・個人再生・破産、強制執行
消費者: 投資・マルチ詐欺、欠陥リフォーム、証券・FX・暗号資産トラブル
刑事: 捜査弁護、勾留阻止・保釈、公判弁護、裁判員裁判、少年事件
日々の暮らしの中で直面する様々なトラブルに幅広く対応する、という伝統的な「マチベン」(町の弁護士)の精神を大切にし、一つひとつの案件を丁寧に扱っています。
伝統的な「マチベン」の危機
しかし、この伝統的な「マチベン」はいま、大きな波に直面しています。大手広告系事務所による集客戦略と、AIを含めたITシステムによる業務効率化の波の中で、中小規模のマチベン事務所は苦戦を強いられているのです。弁護士会などで話を聞いていると、長年の顧客基盤を持つベテラン弁護士の事務所はまだ持ちこたえていますが、若手弁護士からは「この先、現在の経営モデルを維持できるだろうか」という不安の声も聞かれます。法律業界は大きな変革期を迎えており、その中で伝統的なマチベンスタイルの弁護士が安心して仕事に取り組める環境を構築できるかどうか、問われています。
私自身、伝統的なマチベン事務所(東京駿河台法律事務所)で修行時代を過ごした経験から、クライアントワークにしっかりと向き合いながら、人権活動や弁護団事件、弁護士会などのコミュニティでの役割にも積極的に取り組む伝統的なマチベンの在り方に深い敬意と愛着を持っています。この激変する時代においても、そのような価値ある実践を継承し発展させる道を模索してきました。
マチベンにとって最も仕事をしやすい環境を提供する
このような考えから、当事務所はマチベンの受け入れを積極的に進めています。個人事業主としての独立性を最大限に尊重し、事件の受任/不受任の自由、時間の使い方の自由、仕事の進め方の自由を確保しながらも、最先端のITシステムや法律文献情報へのアクセス、熟練した法律事務機能のサポートを受けられる環境を整えています。比較的低廉な経費設定で個人事業主型の弁護士を受け入れているのも、「マチベンにとって最も仕事のしやすい環境」を創出したいという思いからです。
過疎地に向かう弁護士の育成
マチベンを巡るもう一つの課題が、地域格差の問題です。より具体的には東京への一極集中、弁護士過疎地の拡大という現実があります。
当事務所も東京・九段下に唯一の拠点を構える事務所ですから、この地域偏在を加速させる一因となっていることは否めません。様々な事情からやむを得ない面もありますが、これは常に心にとめておくべき課題だと考えています。一方で、大手広告系法律事務所のように全国に支店網を展開することが本当に問題解決につながるのか、地域の法的インフラを支えてきた地元弁護士の方々の視点も踏まえた議論が必要でしょう。
そのような問題意識の中、幸いにも日弁連の過疎地派遣弁護士育成プログラムに協力する機会を得ました。将来過疎地での活動を志す弁護士を受け入れます。今月中旬から第一号となる弁護士が当事務所で研修を開始します。
今後も継続的にこの育成プログラムに貢献し、当事務所が蓄積してきた市民法務分野のノウハウはもちろん、企業法務の先端領域についても知見を共有することで、弁護士の地域偏在問題の解消に少しでも寄与していきたいと考えています。
次回は、当事務所のもう一つの特色である、公益性の高い事件への取り組みについてご紹介します。